バレクラ / pixiv
腕の中の体がもぞもぞと動いて抜け出そうとしたのを感じ、反射的に掴んで引き戻したら、寝起きの耳にも抗議とすぐわかる声が聞こえた。
「おい」
「まだ早ぇだろ」
もうちっと寝ようや、と年下の恋人の体を抱き寄せてやれば、わずかにその腕が突っ張る素振りを見せた。なんだそれほどまでに起きたいのかと、それまで瞑っていた目を開けると、不機嫌そうに唇をとがらせたクラウドが、じっとこちらを見上げている。
「別に今日は出発しねえんだろ」
確か、昨日の夜話した内容だと街を出るのは明日のはずだ。だから今日は特に用のない、ここ最近にしては珍しくゆっくりできる一日となる。だが、クラウドは不機嫌な顔のまま言った。
「買い物」
「んなもん昼過ぎでいいだろ。早く行ったって遅く行ったって同じだ」
な、と言い聞かせながら背中を撫でる、こいつはこういう動きに弱いとわかってきたのはつい最近のことだ。今回も例に漏れずというか、案の定というか、わずかに顔を赤らめた後目を細める。
一生懸命不機嫌そうな顔を作っている様子が手に取るようにわかった。だがそれはあえて言わないで、ぎゅっとより近くに体を寄せる。もうすでに観念しているのだろう、先程のような抵抗はない。
「荷物持ち……」
ぽそりと胸元で吐き出された言葉はそんな呟きだった。
「任せろ」
「……なら、いい」
すう、とバレットに比べたら小さな身体から力が抜ける。そしてややあってから、穏やかで規則正しい寝息が聞こえてきた。
(ほれ見ろ、ほんとは眠かったんじゃねえか)
しょうがねえなと苦笑いしながらも、バレットはその身体を抱え直す。
こいつは頑張りすぎるのだ。こういう関係になってから——いや、その前からも近い様子は見えていたが——頑なにリーダーであろうとする。自分のことはそっちのけで、パーティーのことを最優先で考えようとする。たまにはお前自身を大事にしろと、常々口酸っぱく言っても、今日のように何かと忙しく動き回ろうとするのだ。本当は疲れているのに。
彼が昔言っていた、カッコつけている、というのとはまた違うだろう。後ろに続くバレット達に対しての責任感からきているのだ。何があってもいいように、そして何もないように、備えているつもりなのだ。
(ほんの子供なのにな)
クラウドが戻ってきた日、彼は「できることなら何でもする」と言った。セフィロスにメテオを喚ばせてしまったのはクラウドなのだ。だから、メテオを防ぐためなら、そして星を守るためなら、今のクラウドは何でもするし、しようとする。そして、ついてきてくれる仲間達を守ろうとする。
ぐっと少なくなった険がさらになりを潜めた、無邪気そのものの寝顔をのぞき込む。うっすらと浮かんでいる隈を親指で撫でてやり、瞼に唇を寄せた。
「……子供は子供らしく寝ろってんだ」
胸元に引き寄せたチョコボ頭から、んん、という返事とも文句ともつかない寝言が聞こえてくる。実に幼く、気の抜けたその声を最後に、バレットもまた目を閉じた。