レモネード

エタバン後 庭先でトレーニングって良いよね 「ほい」「ヴォッ」 日課のトレーニングを終えて一息吐こうとした、ちょうどその時だった。ミストヴィレッジにしては珍しくからりと晴れた昼、芝生を踏んで近づいてくる二足と四足の足音に…

とらじろのひ

とらじろちゃんのはなし エタバン後  とらじろは猫である。名前はトラジロウだ。かいぬしはとらじろと呼んでいるから、とらじろだと思っている。とら、と名前がついているから、いずれはきっとかいぬしに連れて行かれた島で見た、あの…

エタバン後 特に何も無い夜の話  帰ってきた時にはすでに灯りが落とされていた。ただそれはいつものことだし、追い出されているわけではない。先程までの火照りを芯に残したまま植物のカーテンをくぐり、慣れた手つきで錠前を開けて静…

タイニーちゃんの朝

エタバン後 タイニーちゃんががんばる(?)はなし  今日もタイニーは負けた。腕試しではない。数々の四つ足の獣に気迫で勝ってきたタイニーは、ここら一体の野良どもには勝てる自信があるしそうしてきた。負けているのはそんな直接的…

煙草

エタバン後ぐらいの時系列 会議の合間に煙草吸う話ちょっとだけ言及があった男の人の話はこれ 「ね、一本頂戴」 手すりに身体を預けるなりそう言ったら、今まさに火を点けようとしていたシェーダーの男は、金色の目をまん丸にしてこち…

デート

エタバン後 やることやってんのにデートでガッチガチになるキンちゃんが見たい  ガチガチであった。 ここに来るまでどう歩いてきたのか記憶にないし、なんならさっき頼んだはずの料理も記憶から消えている。多分やらかした時の軍法会…

あかるいみらい

モブのある意味横恋慕の話 「――えっまた来ちゃったの? あんたも好きだねえ」 取調室にしてはやけに呑気な声だった。ぼろっちい木のテーブルの上に落としていた視線を上げると、部屋の入り口には赤と黒の制服を着た優男が立っていた…

なぎ

エタバン後 ぺーぶいぺーいったはなし バカのつくカップルにしかならねえ たすけてくれ  凪だ。 そこだけ音が消えたようだった。乱闘のさなかにあって、ただその周辺だけ無音の世界として切り取られているように見えた。腰を深く落…

戦の月

たぶんエタバン後かその直前 戦場での中身のないはなし  珍しい月の生まれなんですね、とは今までの人生で何度も言われたことだった。 もちろん同じ戦神の月生まれの人間なんていくらでもいる。珍しい、というのは商人界隈の間でのこ…

壁と背中と伊達眼鏡

これのつづき 最近読んだものに影響されます なろう系っていうんですけど  まただ。またこうだ。またこの光景を見ている。 ぼやけた視界の中で喉を灼きながら、浅い呼吸を繰り返す。もうだいぶ前に持っていられなくなった魔道書は足…