路地裏えっち / レノクラ / 文庫ページメーカー ※R18表現あり
一種の背徳的な絵のようでもあった。
薄汚いという表現がまさにぴったりはまる路地裏は、チラシやらバーガーの包み紙やらのくずやら、果てには酔っぱらいの置きみやげやらが散ってとても衛生的と言えたものではない。当然壁にも小さい子供にはまず見せられないような文言の踊る、どぎつい色をした小さな広告や、野蛮なアピールをした落書きが、少し目を凝らせばすぐに視界に入ってくる。
彼にとって慣れ親しんだ場所でもあるその汚らしい路地裏を背景に、美しい少年が一人、まるでどこかの絵画から切り取られて貼りつけられたかのようにそこにあった。
奔放に、しかし乱雑ではない程度に跳ねた髪は満月のような金色で、薄暗い路地裏にそこだけ光が射しているかのようだ。こちらを見上げる大きな両目は冬の澄んだ空を流し込んで固めたかのように静謐な色をしている。陶器のような肌は触れるだけで壊れてしまいそうなくらいきめ細やかで、その年頃にしては奇跡と言っていいくらいの美しさがそこにあった。
「っん、あ、ん、あン」
——そして、その天使のような少年は、汚れきった壁に背中を預けて、汚い大人に抱かれている。
毎日厳しい訓練をしている割には体重の軽い身体を持ち上げ壁に押しつけ、レノはここ数日の仕事で溜めこんだ欲を容赦なく打ち込む。そのたびに、レノの首に腕を回した少年はすがりついてくるのが実にたまらない。路地の出口からはまぶしい大通りの光と雑踏の気配が思い出したように寄せてきて、その度に少年は羞恥からくる快感に身を震わせている。
「ん、んん、んっ、」
「声出せよ、聞こえねえ」
わざと荒っぽく揺さぶってやれば、ひときわ大きく少年の身体が震えた。だが、レノをにらみつけるわずかな余裕だけはあったようで、青い瞳が間近で剣呑な――ただしレノにとってはただ煽っているようにしか見えない視線をぶつけてくる。
「っだれが」
「声聞きたい」
「っん、——ホテル、ぅアっ」
「今から? 無理だろ」
ようやくはっきりと聞こえた声に満足しながら、レノはがつがつと少年を突き上げる。
そう、最初にそういうキスをしたとき、こんな所じゃなくてホテルに行こうと言われたのだ。だがレノはそれを聞き入れなかった。いや、聞き入れる余裕がなかった。こんな、綺麗なものをぎゅっと混ぜ合わせて固めて作られたような人間にそんな言葉を言われたこと、そしてそう言わせるまでに躾たのは自分であることに気づいたとたん、レノは彼をこの汚い壁に押しつけていた。
「足りなかったら、ホテル、行ってやるよ」
「ぁ、ああ、あっ、ん、れの、……ッッ!!」
背中に回された手がよれたスーツに爪を立てる。
はだけられたシャツから見える白い首筋に野良犬のように噛みつきながら、レノはひたすらに目の前の少年を貪り続けた。