[2018/11/11]バレクラ

クラウドちゃんの寝相 / バレクラ / 文庫ページメーカー

 クラウドには寝相がない。
 ひたすら人形のように眠る。寝返りも打っているのか正直怪しい。それぐらい静かに眠る。眠っているかどうかも解らないくらいだ。最初の頃は、夜寝た時と全く変わらない姿勢でベッドに横になっているものだから、寝ている間はスイッチが切れる人形か何かなのではないかと思った。
 だが、
「——んん」
「おう、こら、そっち行くな、落ちるぞ」
 今ではこれである。
 バレットは苦笑いしながら、自分の腕の中から逃げようとするクラウドを抱きかかえて引き戻した。危うくベッドから落ちるところだった身体をまたとじ込めてやると、不満そうな唸り声が聞こえてくる。
 一体何の夢を見ているのだろう。魘されていないからおそらくは悪い夢ではないようだが、とぽんぽんと後ろ頭を撫でてやると、不機嫌そうだった寝顔がすぐに柔らかいものに戻った。
 その表情の動きも、今までは見られなかったものだ。眠っているときは陶器のような、そんな無機質な寝顔がほとんどだった。あとは魘されているかのどちらかだった。
 それに比べれば、ずいぶん人間くさくなった。本当の自分を取り戻してからとんと、クラウドは寝床の中では暴れん坊になってしまった。いや、これが彼にとっては自然体なのだろうが、それにしたってかなりやんちゃな寝相である。気を抜けばどこかに転がっていくし、ベッドから落ちてしまうこともたまにある。そして、落ちたら落ちたでそのまま丸まって眠るのだ。
 バレットと身体を重ねた日はさすがに疲れるのかそうでもないのだが、そうでない日はとたんにこれ。バレットが抱えてやっても、ふと腕が緩んだり、バレットが寝返りを打って解いたりしてしまうと動いていってしまう。
 寝る場所を壁際に変えてやるべきだったかと思ったがもう遅い。もっと酷かったら考えようと結論づけて、バレットはほんのり暖かい身体を抱きしめる。何と勘違いしたのか何事か呟きながら擦りよってくるクラウドの頭をさらに良い子良い子と撫でて、自分の意識を眠気に任せる。

 翌朝、しっかり捕まえていたはずのクラウドが床で寝ていたのは言うまでもなかった。

三度の飯が好き

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