twitterアンケから ココアを飲むメビウォルクラ / メビウォルクラ / 文庫ページメーカー
ほら、とマグを差し出したら、ものすごく怪訝な顔をされた。
「……」
「なんだよその顔、大丈夫か」
「……何だいきなり」
「何だって、そこにあったから適当に作った」
すぐ近くの台所を指すと、青い瞳がつられて動く。
「食欲ないんなら甘いもの飲んどけ。いざって時に動けないぞ」
「だから、これか?」
「しかもマシュマロつきだぞ」
すごいだろうと胸を張ったら、「別に」という何とも素っ気のない答えが返ってくる。だが無碍に断るようなつもりはないようで、ようやくベッドから体を起こしてマグを受け取ってくれた。
「熱いからな」
「わかってる。あんたは俺の保護者か」
だが忠告は聞くしかなかったらしい。ふー、と細く息を吹きかけ熱くどろどろした液体を冷ますと、ちびちびと口を付ける。その様子があまりにもおもしろくて、ウォルは思わず笑ってしまったが、自分もカップに口を付けていたので幸い見咎められるようなことはなかった。
(……可愛い)
そして、手ぶらだったら口の外へほいと出てしまっていたような呟きも外にこぼれることはなかった。きっとぽろりと不用意につぶやいてしまっていたら、きっとクラウドは最初以上に不機嫌になってしまっただろう。家の中から見つけてきた毛布にくるまり両手でカップを持ってちびちびと飲んでいる様は、普段のクラウドからは想像もつかないほど可愛らしくまとまっていた。ウォルの忠告を聞いて、きちんと冷ましながら啜っているその様子も実に素直で、正直愛くるしい以上の感想が見あたらない。一応大の男だし、腕っ節だってそれなりに、いやかなり強いはずなのだが。
しかもさらに驚いたことに——暖かい飲み物を飲んだら眠くなるという芸当まで見せ始めた。
(マジか)
まさかここまでとは。
セフィロスに刺された傷が未だ治っておらず、体力も落ちているところであるとはいえ、よもやこれほど丁寧になぞってくれるとは思わなかった。
うとうとし始めたその手からマグカップをもぎ取ると、途端に少しだけ不機嫌そうな目で見られたものの、特に大きな抵抗もされない。
「飲みたくなったらまた飲めばいい」
「……わかった」
「あと寝るならちゃんと毛布かけろ。腹も出すなよ」
「うん」
あんたは保護者か、なんていうトゲも飛ばず、毛布をすぐにかぶって丸くなる。
いつもこうだったらいいんだがな——と思いかけて、いつもこうだったら多分おもしろくないな、と考え直した。あのひねくれ具合がちょうどいいのだ。
深くなった吐息を聞きながら、ウォルはぽんぽんとその布の塊を優しく叩く。
つかの間の穏やかな時間を、ココアの甘い薫りが埋めていった。