[2018/07/11]リブクラ

ヤマもオチもないいちゃいちゃ / リブクラ / 文庫ページメーカー

 クラウド・ストライフは多趣味である。
 ただ本人はそう思っていないようで、「多趣味ですよねえ」と言うと決まって不思議そうな顔をする。恐らく、挙げられるものがかつての旅では「やらざるを得なかった」ものだったからだろう。
「チョコボもスノボも移動のためだったしな……チョコボはたまに乗りに行ってるが、狭い意味で言うならバイクなんじゃないか」
「あー、確かにそうですね。ティファさんから聞きましたよ、フェンリルの話」
 するとクラウドはふいと顔を伏せてしまった。恥ずかしいのか、その耳がほんの少しだけ赤くなっている。正直ほほえましい、いやむしろ愛しいのだが、クラウドにとってはあまり触れられたくないらしい。
「良いじゃないですかそういうの。ボクだってエンジニアですし機械好きですよ」
「そっちじゃない、機械の話じゃなくて」
「あ、お小遣いですか? でもそれも良いじゃないですか」
「……なんだかその、子供っぽくて」
「ボク大好きですよそういうところ」
 本心から告げるとますます耳が赤くなり、こちらを向くどころか背中まで向けられてしまった。もーこっち向いて、と二の腕に優しく手を添えたが、「嫌だやめろ」と抱え込まれてしまう。それどころかぐいと引っ張られて、結果その背中に密着することになった。
「ちょっと、クラウドさん、ボク動けないんですけど」
「そのままで良いだろ。別に寝るだけなんだ」
 大人しくしとけと背中越しに言われ、リーブは「もー」と唸るしかなかった。
 彼のこういうところは、リーブにとっては愛しくてしょうがない。ともすれば星に生きる全てのものの頂点に立つ生き物かもしれないのに、リーブに対してはふと幼い顔を見せてくるし、身体を動かすことに関しては驚異的な適応力を見せるのに、内面は純粋で心を許した人間に対しては危ういほどに気安くなる。アンバランスで少し危うげなその様が、好ましくてたまらないのだ。
 最初は親子の情なのかとも思った。父親のいないクラウドも、当初はそう考えていたらしい。ともに過ごすにつれ、そんなものではないと互いにはっきり自覚したが。
「クラウドさん、そろそろ離してくださいよー」
「嫌だ。離したら変なことするだろ」
「あ、解ります? 離さなくても変なことするんですけどね」
 すぐそばの項にわざとらしく大きな音を立てて吸い付くと、「ひっ」と可愛らしい声が上がった。さっきしただろ、なんて抗議はもちろん最初から聞かないふりだ。抱えられた手もうまく動かし、ちょうどそこにあった脇腹を指先でついと撫ぜてやる。
「っ、リーブ、ほんと、」
「残念ながら、ほんとです。クラウドさんがかわいくて」
 すみませんねえなんて謝るのは口先だけだ。
 本気の抵抗が来ないのをいいことに、リーブはそのままクラウドに覆い被さった。
「もう一回、気持ちよくなりましょうか」
 どうせあとは寝るだけなんですし、と付け加えたら、「ばか」とこれまた可愛らしく怒られた。

三度の飯が好き

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