げんじゅうおうと!:寝込んだクラウドちゃん / バレクラ / 文庫ページメーカー
一日寝かせてやったら調子は上向いたらしい。もとより白いがさらに白くなっていた顔色もだいぶマシになり、頭痛で顔をしかめることもなくなった。時折幻獣たちがギャアギャアと騒がしくまとわりついてくることもあるが、特に体調に響くほどでもないようあった。
このまま何事もなければ、次の目的地には健康なまま着けそうだ。
——そう思っていたのだが、現実はそう甘くなかった。
「だめだ……」
「だめか」
そうかあ、とバレットは溜息と共に吐き出すと、ぽんぽんと布団を叩く。その布団の下には、すっかり憔悴しているクラウドがきっちり収まっていた。額には薬屋で買った冷却シートのおまけつきだ。
「悪い……」
「謝んなって。しょうがねえよ」
そう、しょうがなかったのだ。あのジェノバがかつて収容されていた魔晄炉が近くにあったせいかどうかはわからないが、ニブルヘイム近辺は突然変異種がまれに出現する。今回はその稀なケースにぶち当たってしまい、さらに稀なことに、ドラゴンの変異種に遭遇してしまったのだった。元のドラゴンであれば特に苦労もしなかったのだが、変異種となれば話は別である。肥え太って空もろくに飛べなくなった「原型」と比べて、変異種は縦横無尽に空を飛び、執拗にクラウドたちを追い回した。だからといって整備中のハイウィンドを呼び出すわけにもいかず、バレットの銃も届かない位置に逃げられてしまえば、採る手段はただ一つである。
かくして、バハムートの背に乗りドラゴンと壮絶な格闘戦を繰り広げたクラウドは、乗り物酔いと魔力切れを併発し、再びベッドの中の住人となったのだった、
「一応薬置いとくからな」
外に出る前に念のためと、頭痛薬をサイドテーブルに置いたところ、途端にクラウドの眉が寄った。
「……飲まなきゃダメか」
「あーうん、無理はしなくていい」
バレットは特に強要しなかった。
以前の経験があるためか、こう見えてクラウドは薬を随分苦手としている。飲んだら飲んだで逆に気持ちが悪くなるという厄介な体質持ちなのである。これ以上体調が悪くなっては元も子もない。
「キツかったらでいい」
「わかった」
「PHSもここに置いとくからな。具合悪くなったら誰でもいいからすぐ連絡しろ」
うん、と頷くその金髪を優しく撫でてやる。ついでに布団も直してやって、財布と買い物メモを持った。
「じゃ、行ってくる」
「わかった」
仕上げにキスを一つして、バレットは部屋を後にした。