オペオムバレットさんとお世話されるクラウドちゃん / バレクラ / 文庫ページメーカー
どたん、という音と情けない悲鳴が聞こえたので、作業の手を止めて慌てて様子を見に行ってみれば、案の定毛布に絡まってもがいている姿があった。
「おう、大丈夫か?」
パニックになっている身体をダイナミックに抱えて抱き締め、腹や頭を撫でて落ち着かせてやる。頭打ってねえかと聞くと、大丈夫の意なのだろう、一度だけ頷きが返ってきた。
ただ、見上げてくる目は涙で潤んでいる。落ちて痛かったのか、それとも恥ずかしいのかと思ったが、抗議の声が聞こえてようやくその理由に気付いた。
「よし、よし、起きて一人だったからびっくりしたんだな。ごめんな」
「うー」
「わかった、わかった。あと少しで飯できるから、もうちょっと待ってられるか? 大丈夫か?」
「……ぅう」
渋々ながら頷いたその金色のもふもふを、いい子だ、と撫でてやるとベッドの上に戻してやる。たくさんあるぬいぐるみのうち、一番のお気に入りであるチョコボのそれを抱えさせてやると、最後に一回だけ額にキスをした。
「待ってな」
「……」
うん、と頷いたのを見て、バレットはまたキッチンに戻った。
クラウドの脳が損傷して二ヶ月。
仲間たちは、クラウドを宮殿の片隅に置いて行った。
切っ掛けは大きな竜種との戦闘だった。とどめを刺したクラウドのその頭を、断末魔で暴れた竜種の尾が酷く打ち据えたのだ。
一命は取り留めたものの、目を覚ましたクラウドは、自分一人では立つことすらできなくなっていた。回復魔法が得意な仲間が頑張ってくれたのだが微々たるもので、それまで長い間皆と行動していたクラウドは、一行の元を離れて治療に専念することになった。
そしてバレットは、クラウドとともに宮殿の片隅、恐らくは住み込みの使用人たちのために誂えられたのであろう部屋で、彼の世話をしてやっていた。同じ世界の仲間であるだけではなく、クラウドがこんな状態になる遠因を作った、その責任を感じてのことだった。
「クラウド、ほれ、あー」
「あー、んっ」
「うまいか」
「う」
「よしよし」
柔らかく煮た野菜のスープを、雛鳥のように素直に口を開けるクラウドに食べさせてやりながら、バレットは今日は何をしてやろうかと思案する。天気が良ければ散歩もいい。近くの水場で遊ばせてもいい。口の中の物を飲み込んだクラウドにどちらが良いか聞いてみたら、「バレット」という一言が返ってきた。
「ああ? ……ここでいいのか? 外行かなくていいのか?」
「バレット」
「そうか、わかった。じゃあゆっくりしよう。二人で」
満足げに笑うクラウドにつられて、自分の頬もゆるむのがわかる。
なんて幸せなんだろうか、なんて独り言は胸の内にしまい込んで、バレットはまたクラウドの口にスプーンを差し入れた。