[2018/06/29]バレクラ(2)

ヒグマとオオカミ:寝ぼけて吼えちゃうクラウドちゃん / バレクラ / 文庫ページメーカー

「アォンッ」
「おぁっ!?」
 突然脳を揺さぶった音に驚いて目を覚ましたら、こちらもまだ半分寝ている狼の顔があった。
 しぱしぱと瞬きをする狼は、バレットの腕の中でやがて青年の姿を取り——はしたものの、何が起こったのか理解してないようで、「……わっふ?」という謎の音を口から発する。
「なんだ、どうした、お前。いきなり吼えるなよ」
「……今の、おれか?」
「お前だよ」
「……」
 どうやら彼は、自分で出した声に自分でびっくりして目を覚ましたようだ。イヌ科の器を持つ奴らには得てしてよくあることだというが、オオカミの器を持つクラウドも、その本能には勝てないらしい。
「何か変な夢でも見たか」
 目の前でふわふわと漂うその金髪に指を埋める。わずかに触れた耳がぴるぴると動いたが、その動きとは裏腹に、本人はまだ眠たいらしく恐ろしくゆっくりと口が開いた。
「……そんなにわるくなかった」
「本当かよ。あんな吼えといて」
「本当。大丈夫」
「まあいいけどよ」
 わしわしと撫でてやったら、またとろんと星の色が眠気に染まる。そうそう見せることのない完全に気を許した姿に思わず抱き潰したくなったが、よしよし、と背中を撫でてやるだけにとどめた。
「今度は起こすんじゃねえぞ」
「ぅ」
 返事になっていないようななっているような言葉を残し、クラウドの吐息が深くなる。
 その音に誘われるようにして、バレットもまた、ゆったりとした眠気に浸っていった。

三度の飯が好き

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