いつの間にかくっついてた / レノクラ / 文庫ページメーカー
まれに、この生き物は何なんだろうか、と思うことがある。
「なんだよそれ、喧嘩でも売ってるつもりか」
起きていたらまず間違いなくそう言ってくるであろう相手は、今は完全に夢の中だった。いびきすらかかず、ただ穏やかな寝息だけを目の前の自分に聞かせながら、実に気持ち良さそうに眠っている。好奇心に駆られてちょっと鼻をつまんでみたら、少し眉が寄った後に、薄い唇が少し開いた。
よくわからない生き物である。レノならこの段階で飛び起きているというのに、こいつは起きるどころか寝返りすら打たない。完全に無防備で、安心しきった姿を晒している。
——以前はこんな無様な格好なんて想像もつかなかった。互いに会う時はほぼ殺し合い、自分たちは仕事だったがそれゆえに本気だったし、相手はおそらく本気で来ていただろう。
止めを刺される前にいつも逃げてきてはいたが、もしも自分達が止めを刺す側であったらほぼ確実に息の根を止めていた。
紆余曲折があったとは言え、そんな人間相手によくもまあ、これほどまでに無防備でいられるものである。つくづく妙な生き物だ。