セフィロスさんに会いに行きたいクラウドちゃん / セフィクラ / 文庫ページメーカー
うぅ、と唸るような声がした。
はっと気づいたときにはもう遅く、目蓋から魔晄色が漏れていた。一瞬だけ彷徨った目線はすぐに理性の光を取り戻し、そして自分の口にいつもの不快な異物が入り込んでいないことに気づいた瞬間、彼はすぐさま行動を起こした。
だがそれをバレットの指が止めた。舌を噛み切るつもりだった歯は、代わりにバレットの指の肉に食い込んだ。義手の方を出せばよかった、などと当然のことを考える間もなく鋭い痛みが脳まで届いたが構わずに、念のためと傍に置いていた発信器を叩く。そして間髪入れずにクラウドの体を羽交い締めに——しようとして、ここまでで当の本人が全くと言っていいほど動いていないことに気づいた。
「ぁ、……う、ゥ」
彼は呆然と、バレットの腕をふりほどくことすら忘れて、自分が噛み千切ろうとしていたものを、ぼたぼたと血を垂らしているバレットの指を見ていた。確かに血の量は多いが、それでもクラウド本人の噛む力が弱まっていたせいか骨にまで届くようなものではなかったし、この分だと回復魔法どころかポーション程度で治ってしまうだろう。だがそれでも、クラウドはひどく狼狽えていた。