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自機+よそのこ(シルヴァくん)
下ネタの話

「にーさんさ、お尻の穴拡げたりとかしてる?」
「…………はい?」
 文字通り変な声が出た。
 終末の対応に追われ互いに不在になりがちな中で、たまたま家に居るタイミングがかぶり、さらにたまたまどちらも明日の朝まで仕事がなかったものだから、本当に久しぶりにいつもの就寝スタイルになった夜。うとうとしながら、なぜか元気いっぱいなシルヴァの話に適当に相槌を打っていただけだったので、突然突っ込まれたこの質問には対応できなかった。そもそも普通こんな質問に対する答えをすぐ出せるような人間なんていない。おかげで少し眠気が飛んだ。
「な、なに……? いきなりなんで?」
「だからさ、にーさんお尻拡げたりしてるのかって」
「うんそれはわかるんだけど」
 もぞもぞと体勢を変えてシルヴァの方を向く。
 薄暗がりの中で見えたシルヴァの顔は至って普通だった。単純に疑問に思っている顔だ。
「なんでいきなりその話してきたの……?」
 さっきまで薬学院のベッドの寝心地の話をしていたはずなのだが。
 するとシルヴァはぱちくりと瞬きをした。話が突飛であるという自覚がなかったらしい。
「薬学院行った後に任務がきて、戻ってから皆で話したんだよね」
「なにを?」
「えっと……ルガディンのが入らないって話」
「おっさんの隊って下ネタが共通言語なの?」
「ちゃんと他の話もするよ! ……その入らない子、ルガディンと付き合ってるアウラだったんだけどね。にーさんの相手ルガディンとか多いじゃん? アウラより身体小っちゃいのになんで入るんだろうなって思ってさ。もし何かしてるんだったら教えてあげようかなと」
 どっちもできた方が楽しいもんね、と言って、大きな手が尻を揉んできた。何かしようという気はなさそうだったのでそのままにさせる。
「……あー、……うん、わかんなかったけどだいたいわかった。あんたなりの善意ってやつだな」
「そんな感じ。で、何かしてるの?」
「いやなんも」
「何もしないではいるの? ゆるくなんない?」
 手が腰に回った。寝間着の裾に着いている尻尾をいじっている。
「こればっかりは個人差でしょ。俺はそういう体ってだけ」
 昔から相手が年上だったり、身体の大きい種族だったりしていたが、思い返してみれば苦労したことはあまりない気がする。唯一苦労したとはっきり思い出せるのは初めての相手だが、それも何かしたかと言われるとただただ丁寧に回数を重ねた記憶しかない。相手も自分も忍耐強かったの一言に尽きる。
「まあ慣らしたいなら道具とか使えばいいんじゃないか? ちなみに今どうしてるのその子ら」
「タチネコ逆にしたらしいよ」
「へー。ルガディンの子は入るの?」
「入る入る。確かめた。あとは慣れ」
「……こじれてない?」
「あっ確かめるってあれだよ、ちょっと指入れただけ。右手焼かれるかと思ったけど」
 土下座して許してもらった、とシルヴァは笑った。
(笑い事じゃない気がするが)
 どうもシルヴァの隊はうちと違って奔放らしい。隊が上手く回るのなら、それはそれでまた一つの運営の形——なのかもしれない。もちろん、シルヴァのところだけの特殊なケースである可能性も多大にあるが。
「……ま、なに、ほどほどにね……」
「なにそれどういう意味」
「そのまんまの意味だよ。そろそろ寝ていい?」
「あっうんごめんね」
 おやすみなさいという挨拶とともに、大きな手が背中に添えられた。撫でるでも叩くでもなく、ただそこにある大きな熱に、先程飛び立っていった眠気がまた舞い降りてくる。
 おやすみという返事が言えたかどうか怪しいまま、ずぶずぶと睡魔に埋もれていった。

三度の飯が好き

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