😇

身内向けなので解説がとても少ないマフィア×ファンタジーパロ
よそのこ+よそのこ(+自機)
(シルヴァくん視点+ライハくん)

 この家には、なにか、いる。
 最初に来た頃からうっすらと感じてはいたことだったが、明らかに何かがいる。目に見えず音もしない、だがしかしいる。確実に。人以外の何かが。
 ちょっと荒事に関わりがちなこの仕事を始めてから幾星霜、人間は嘘を吐くけれども自分の感覚は嘘を吐かないということが解ってきた。最近やってきた主のペットにそれとなく何かいるかと聞いてみたら「あっ、あ、え、そっか」という否定も肯定もされない怯え気味の反応をもらったし、それならと自分の雇い主に聞いたところ、「君は本当に鋭いな」と含み笑いが返ってきた。身内にあまり嘘を言わない主人の言葉が何もかもを物語っている。
「だから正直しんどい」
「へえー面白え」
 面白がるんじゃないよと話し相手の昔馴染みに伝えると彼は体格に似合った豪快さで酒を飲み干した。
「だって面白えだろ、この世のもんじゃないものが居るってさ」
「いや無理」
「悪さはしねえんだろ。呪うとかそういうえぐいの」
「……」
「え、すんのか」
「……呪いはされてない、ただ悪戯はされる」
「可愛いじゃん」
 可愛くねえよと悪態を吐きながらそのまま酒をあおる。
「寝るときにそばになんかいたり、走り回ってるとか、扉が勝手に閉まるとか、物が触ってないのに落ちるとか、そういうのほんとダメ」
 人間だったら殴れば黙るが、目に見え触れないもの相手は対処のしようがない。それに何より怖い。
 すると昔馴染みは「だはは」と実に気分良さそうに笑った。
「ほんとあんたさ、見た目に寄らずそういうとこあるよな」
「笑い事じゃないっての!」
「あーごめんごめん、人が苦手なもん笑うのはダメだな」
 店員を呼びつけておかわりを注文した彼は、その長い足をごく自然に組み替える。
「悪戯しかしねえんだろ」
「しない」
「じゃあさ、見えてるっぽい奴にお願いしてもらったら良いんじゃねえの。そういう奴の話だったら言うことも聞いてくれそうだし」
「それはそうなんだけど」
「なんかあんのか」
 ないと言えばないがあると言えばある。悪戯好きの気配が一つ増えたきっかけはあのペットだ。そしてそのペットも、見ている範囲では増えた気配とは何かと気安い付き合いであり、言葉も交わしている様子も見かける。だから仲は良いのだろうし、彼のお願いなら聞いてくれるかもしれない。
「ただ」
「ただ?」
「最初やらかしたんだわ……」
 迎えに行ったその日に怖がらせてしまった。端的に言うと思いっきり脅した。その後一応謝ったところ話しかければ答えてはくれるようにはなったが一定の距離を感じるし、そもそも彼から近寄ってきてくれない。
「なんでまたそんなことしたんだよ」
「いやその怖くて」
「そのペットが?」
「違う。迎えに行ったときからもう何かいて、怖かったから、つい」
 次の瞬間、ふっはぁー、と息と声が程良く混じり合った大笑いが聞こえた。もういいよ好きなだけ笑えよと不貞腐れながら、目の前のナッツを摘まみ、治まるまで待つ。
「あー、悪い、ごめん、ちょっと我慢できなかった」
「いいよもう」
 ひーひー言うまで笑っていた彼は、目尻に浮いた涙を拭う。
「そんなにアレならオレから話そうか? ここ連れてこいよ」
「んー……気持ちだけもらっとく」
「なに? 連れてこれねえの?」
「お嬢がな、しばらくは室内飼いにするって言ってたから」
「あー、外出せねえのね。じゃあしょうがない頑張って」
 ほんと他人事だよなあという愚痴には、他人事だもの、という至極まっとうな返事を被されてしまった。

***

 顔を覆う目隠しと布を外してやった途端、くちゅん、というくしゃみが聞こえた。
「おや。大丈夫?」
「大丈夫。ちょっと鼻がむずむずして」
「なんだろうね。冷えないようにこっちで寝ようか」
「うん」

三度の飯が好き

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