ハッサクさんからいただいた絵のふたり / バツクラ / 文庫ページメーカー
胸にヒナチョコボがちょこんと座ったところで目が覚めた。
「……んぁ?」
眠気に霞む目を懸命に凝らしてみたら、何故か現実世界のはずなのにこちら側のバッツの胸の上にもふわふわとした金色が乗っていた。ぎょっとして瞬きを二度、三度としてみたら、もふもふとしたヒナチョコボはようやく本来の姿に変わる。
「なんだあびっくりさせるなよ」
ヒナチョコボはクラウドだった。寝る前にはなかった毛布を見るに、どうやらバッツがソファーで寝こけているのを見つけてかけてくれたらしい。ただその後、なぜか本人も眠気に引きずり込まれてしまい、すとんとソファーのそばに座ったが最後、そのままバッツの胸に墜落したというオチのようだ。
「クラウド、風邪引くぞ」
柔らかい金髪に指を埋めてもふもふと撫でたり、垂れている髪をくるくる指に巻き付けたりして起こそうとするも、バッツの身体に負担をかけまいとする絶妙なバランスで眠っている割には深く寝入ってしまっているらしい。んー、という謎の音だけ吐き出してそれきり反応することはなかった。
「ええまじかよ……」
暖房をつけてはいるし、クラウドはカーペットの上にいるとは言え、このままだと心配だ。かといって、スイッチが切れた彼はなかなか起こそうとしても起きない。むしろ機嫌が悪くなる。
どうしたもんかと思案することしばし。
「あ」
バッツの目が自分の上の毛布をとらえた。ほんの少しだけ身体を起こすと、バッツはクラウドをちょっとだけ退け、毛布を引っ張り出す。そして今度は、少しだけ離していたクラウドを完全に胸に寄りかからせると、その上から自分ごと毛布を掛けた。
あとは、クラウドが完全に倒れてしまわないように支えてやれば完璧である。右腕はつらいが我慢できる程度だし問題はない。よしよしと満足していたらクラウドの方も満足したようで、バッツに完全に身体を預けてきた。
――普段はあれだけかっこいいのに。
バッツの方から見える顔には、いつも見せる端整な、他人からは怜悧とも取れるような硬く鋭い雰囲気はかけらも滲んでいない。正直クラウドがこの部屋にいる時点で、そういった外用の空気を纏うことはそうそうないのだが、それでもこの無防備な姿はバッツだけの特権のような気がしてきて、じわりじわりと身体だけではなく心の温度も上がってくる。
(かわいいなあ)
これじゃほんとにヒナチョコボみたいだ。
起きている本人に言ったらきっと嫌がるに違いない。だが、今のクラウドはすっかり年相応、いやむしろそれよりもぐっと幼いように見えるのだし、何より本人は夢の中だ。言ったってバチは当たらないだろう。
クラウドが「お腹減った」と起き出してくるまで、バッツはずっとそのおおきなヒナチョコボを愛しげに眺めていた。