帰った途端いちゃいちゃするふたり / リブクラ / 文庫ページメーカー
扉を開けて早々に愛しい人が目の前にいたものだから、リーブはただいまを言う前に抱きしめてしまった。「おかえ」まで言ってくれたらしい相手は抱きしめられた途端に固まってしまったが構うことなく、肩口に顔を埋めて思いっきり彼のにおいを吸い込む。
「——ちょ、っとリーブ、大丈夫か」
腕の中の彼が再起動したのは、リーブが二度目の深呼吸をしたときだった。ただやはり状況を掴み切れていないのか声は明らかに狼狽えているし、背中を撫でてくれる手も少し戸惑い気味である。
「仕事で何かあったのか」
「なんもないです、なんもないんですけど」
なんかぐっときてしまって、とさらに腕に力を込める。
「なんやろねえ、クラウドさんがお帰りって言ってくれたからですかね」
「そんなのいつも言ってるだろ……」
背中の手があやし気味にぽんぽんと叩いてくる、その仕草すら愛おしくてたまらない。
「とりあえず、リーブが疲れてるのはわかったから、部屋入ってくれ」
「えー、嫌です」
「なんで」
「もうちょっとこのまま」
「このままって言ったって、鞄も置いてないしコートも」
言い掛けたクラウドの唇を塞ぐと、彼はまた固まってしまった。現実に戻ってくる前に抵抗も何も忘れ去った彼の口の中を思うがまま掻き回してやれば、さほど経たないうちにその足から力が抜けたらしい。
かくんと膝が落ちてしまう前に玄関脇の壁に押しつけ、自分の膝をクラウドの両脚の間に割り込ませてやってから顔を離すと、相手はすっかり怒る気も無くしてしまったようだ。飲み込みきれなかった涎が口の端から伝い落ちているのに拭おうともせず、ただリーブのことを蕩けた瞳で見上げている。
「可愛い」
指で口元を拭いながら囁いてやれば、ほんのり色づいていた頬がさらに紅くなった。とっさに顔を伏せようとするその動きを顎に添えた手で止めて、今度は啄むような軽いキスを一つ落とす。
「っん、……リーブ、」
間近から向けられた縋るような瞳に、リーブの背中にぞくぞくと言いようのない快感がはしった。
星に生きるものたちの頂点に立とうとする青年が、自分にだけはこうして良いようにされているといのだという優越感も確かにあるだろう。ただ、それだけではない、リーブ・トゥエスティという男の本能を揺さぶり起こすようなにおいを、彼が放っているようにすら思えた。
「クラウドさん、このまましちゃっていいですか?」
ちょっと我慢できそうにないですと胸元を緩めながら問うと、クラウドは一瞬眉根を寄せる。だが、拒むことはしなかった。
「……あとでベッドに連れてってくれるなら」
「もちろんです」
柔らかい金髪を撫で、熱い頬に唇を寄せる。
「今から二回目のおねだりとはね」
乗らない訳ないじゃないですかと笑ったら、「ばか」という可愛らしい罵倒を貰う羽目になった。