NTバツクラのイチャイチャ / バツクラ / 文庫ページメーカー
バッツがクラウドと会ってまず探したのはベッドのある世界だった。次元の狭間、数々の世界の断片を抜けてマーテリアの元に戻ることが最終的な目的ではあるが、二人にとってはまずやるべきこと——やりたいことがあった。
「クラウドぉ」
「なんだ」
「ちゅー」
「さっきもしただろ」
「もう一回」
頼むよ、などと腰に抱きつきおねだりをすると、クラウドははあやれやれと肩を竦めるが、それでも断るようなことはしなかった。それじゃ遠慮なく、と形のいい唇を食むと、クラウドの手が遠慮がちにバッツの腰に回される。
軽めのそれを何度かしたところで、いつの間にか持ち上がっていたクラウドの手が軽くバッツの胸元を押した。
「待った。もういいだろ」
「えー」
「我慢できなくなったらどうする。俺はこんな外でするのは嫌だぞ」
だから待てだと押し返し、クラウドはまたすたすたと荒野を歩き始める。おれはここでもいいけどな、というよこしまな一言が口をついて出て行きかけたが、こんなふきっさらしのところで事に及んだところでよからぬじゃまが入りそうだと胸の内に押し込めた。
「クラウドさあ」
「ん?」
「えっちになったよなあ。前はもうちょっとガード固くなかったか」
小走りで追いついた横顔がちらりとバッツに視線をよこす。
「そうか?」
「そう。前は『そもそもする気がない』って感じだったじゃん? 今は『ここじゃしたくない』ってさ」
「……ガードが緩いと嫌か?」
流された視線に緩む口元、もうこれはわざとやっているのではないかという一言に、またバッツの本能がくすぐられる。ほらそう言うとこ、と小突いても、前は眉を寄せたであろうクラウドはただ何もいわずに笑うだけだ。
「何かあったのか? 心境の変化、みたいなさ」
「うん、——なかったと言えば嘘になるが、たぶん」
「たぶん?」
「あんたと会えて嬉しいんだろう」
みゅっ、と自分の口から今まで出したことがない変な音が出た。きっと顔も変なことになっているのだろう、クラウドはしてやったりといったような笑顔を浮かべてまたさっさと歩いていく。
「……ホントに変わったなあ!!」
後で覚悟しとけよと叫んだら、はいはい、と右手があがった。